SKD11は炭素工具鋼にクロムやバナジウム、モリブデンなどの元素が加工されている合金工具鋼であり、耐摩耗性に優れているといった特徴を有しています。このページでは、SKD11の活用ポイントなどについて解説していますので参考にしてください。
SKD11はクロムやモリブデン、バナジウムといった元素が炭素工具鋼に添加されている合金工具鋼であり、日本国内においてはJIS規格によって定義されている鋼材の1つです。また冷間金型用の鋼材として「ダイス鋼」と呼ばれることもあります。なお「SKD11」の「SKD」は「Steel Kougu Dice」の略であり、「Dice」は日本語で「金型」を意味しています。
冷間金型用の鋼材として一般的な素材であり、鉄鋼メーカーによって異なる商品名で相当材が市販されています。また、SKD11を発展させた合金工具鋼も色々と存在して幅広く活用されていることが特徴です。
SKD11は熱処理によって強度や硬度、耐摩耗性を高めることが可能であり、金型の他にも治具や金属刃物、ゲージの材料などに活用されています。
SKD11は耐摩耗性に優れている鋼材であり、熱処理によって生じる歪みが少なく、高硬度を得やすいことがメリットです。そのため高負荷がかかる環境でも正確な形状を維持しなければならないプレス用金型の材料として使われる他、治具などにも使われており、多くの鉄鋼メーカーから販売されている一般性や流通性もメリットとして挙げられます。
その他、耐熱性に優れており、高熱にさらされる環境に置く加工部品の素材として利用しやすいこともポイントです。
SKD11は熱処理によってとても優れた硬度を獲得できるからこそ、切削加工性が悪く、加工しにくいことがデメリットです。変形しにくく切削加工だけでなくその他の加工でも理想通りの加工には相応のスキルや技術環境が求められ、SKD11を使った加工を叶えるためには十分な実績を有する加工業者へ依頼しなければなりません。
また、SKD11には炭素が含まれており、ステンレスと比較して耐食性に劣っていることもデメリットです。
SKD11と似ている鋼材の1つに「SKD61」があります。冷間金型用の鋼材として知られるSKD11に対して、SKD61は熱間金型用の合金鋼として知られており、SKD61は炭素工具鋼にタングステンやモリブデン、バナジウムといった元素が添加されています。
硬度に注目すると、炭素とクロムを多く含有しているSKD11の方がSKD61よりも優れており、モリブデンやバナジウムを多く含有するSKD61の方が靱性や熱間引っ張り強さなどに優れています。
なお、SKD11は300度を超えるような高温下では急激に強度が低下していきますが、SKD61は高温下でも強度を維持できることが特徴です。
SKD11の物理的性質としては以下のような特徴が挙げられます。
耐熱素材として知られるステンレス鋼に近い高温特性を有しており、温度変化による形状変化の割合も抑えられているため、金型として使用される際の摩擦熱にも耐性を得やすいといったことがポイントです。
SKD11の化学成分はJISにおいて下記のとおりに規定されています。
SKD11の特性を持たせる元素としてモリブデンやバナジウム、クロムといった物質が役割を果たしており、クロムによって耐食性が高められています。ただし、SKD11はクロムと同時に炭素を多く含有しているため、この影響によってステンレス鋼よりは耐食性が劣っていることも特徴です。
その他、モリブデンは耐摩耗性や熱入硬化性を高めるために添加されており、バナジウムは耐摩耗性を向上させるために添加されています。なお、SKD11ではタングステンを意図的に添加してはならないという注意点も存在しており、部品加工の素材を調達する際は気をつけなければなりません。
耐摩耗性や強度に優れ、摩擦熱や高温による形状変化などの影響も受けにくいSKD11だからこそ、プレス用の金型を作るために活用されています。また、プレス用の金型として使われる他にも、転造盤用金型の素材としてSKD11が用いられることもあります。
なお、転造とは圧力をかけながら素材を転がして円筒状の金属材料を成形していく金属加工の方法であり、ネジ山を成形して金属ネジを製造するといった目的で利用されている技術です。
プレス加工用金型材として知られるSKD11ですが、他にも複数の用途に使われています。
SKD11はロール成形用の回転工具であるフォーミングロールの材料として使われたり、耐摩耗性が求められる治具の材料として使われたりすることもあります。またシャーリングマシン(切断機)のシャー刃や包丁のような金属刃物などを製造する際に使われることもあるでしょう。
以上の他にも、測定ゲージや検査ゲージといった各種品質検査のゲージの素材として活用されることもあります。
SKD11は耐摩耗性や高硬度、強度に優れている鋼材だからこそ、加工するためには相応の技術や専門知識を必要とします。また加工時の割れなどにも配慮しなければなりません。
SKD11は熱処理によって高硬度・高強度を獲得するため、SKD11を切削加工によって加工しようと思えば基本的には熱処理前に実行しなければなりません。
切削加工はSKD11の加工法として一般的に知られるものですが、どうしても熱処理によって形状変化などが生じる可能性もあり、高品質の部品加工が必要なケースでは熱処理後に改めて研削加工によって仕上げ加工を施すといった工夫が必要です。
ただし、当然ながらSKD11については研削加工も容易でなく、熱処理後の加工について最小限に抑えられるよう熱処理前の切削加工を適切かつ十分に行わなければなりません。
放電加工とは電極と素材の間でアーク放電を発生させて、そのエネルギー(熱)によって素材の表面を溶融・除去することで希望の形状へ整える加工法です。高硬度を有する鋼材でも放電加工であれば加工することができるため、熱処理後のSKD11であってもスムーズに加工することが可能です。
ただし、放電加工では加工時に高い温度が発生するため、SKD11を放電加工によって加工するためには事前加工として500度以上の高温による焼き戻しを行っておくことが無難とされています。これは150~200度の低温焼戻しの場合、改めて放電加工を行った際に熱影響による形状変化や亀裂発生といったリスクが残存してしまうからです。
SKD11を使う場合、表面特性を調整するためにめっき加工や表面改質熱処理といった表面処理加工を施すこともあります。ここではSKD11に対するめっき処理や熱処理について解説します。
めっき処理(めっき加工)とは、対象とするワークの表面に目的の金属を析出させて被膜を形成する表面加工の総称です。
SKD11はクロムを含有しており耐食性に優れている反面、炭素含有量も多いためステンレス鋼と比較すれば耐食性に劣っていることがポイントです。そのため、SKD11では耐食性を向上させる防錆対策として表面をカバーするめっき処理が行われます。
また、硬質クロムめっきによって表面の硬度を一層に強化し、耐摩耗性を向上させるといった技術もあります。
SKD11の耐摩耗性や硬度、強度をさらに追求するため、複数の熱処理によって表面加工をするケースも少なくありません。
SKD11で用いられる熱処理(表面改質熱処理)の方法としては以下のようなものがあります。
高温の窒素やアンモニアガスの中にSKD11を置き、ワーク表面に窒素を浸透させて硬度を高める表面処理です。
窒化チタンなどの成膜物質を高温に加熱し、真空中でSKD11の表面に付着させます。耐摩耗性や耐食性を向上させます。
成膜物質を加熱した上、SKD11の表面で化学反応を励起させて薄膜を形成する方法です。耐摩耗性や耐食性の向上が期待できます。
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SKD11はメリットの多い素材である反面、加工には十分な専門性や加工環境が必要であり、適切な業者を厳選した上でニーズを伝えて交渉しなければなりません。
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