SCM440はクロムモリブデン鋼として知られる金属素材の1つであり、炭素含有量が0.38~0.43%となっています。このページでは、様々な用途の部品加工に使われるSCM440について特徴や加工時に注意しておくべきポイントなどをまとめて解説しています。
SCM440は「クロムモリブデン鋼(SCM)」の中でも炭素含有量が0.38~0.43%の範囲内に収められている金属素材であり、クロムモリブデン鋼の中では比較的強度や硬度が高くなっている鋼材です。
SCM440は一般的に流通していて手に入りやすい素材であり焼き入れ加工も行いやすく、自動車のエンジンやシャフト、航空機脚部品など様々なものに利用されています。
SCM440は流通性に優れている汎用的な金属素材であり、色々な用途やコンセプトに合わせて活用しやすいことがメリットです。また、焼き入れ加工を行って強度や硬度を高めやすいため、クロムモリブデン鋼の中では比較的耐久性に優れています。
コスト面でもクロムとモリブデンを含んでいる鋼材としては比較的安価とされており、コストパフォーマンスを高めやすいのも魅力。
含有されているクロムとモリブデンによって「しなり」を獲得し、靱性にも優れているため、割れや振動による影響を抑えやすい場合にも利用されます。
ステンレス鋼と比べると切削加工を行いやすく、金属加工の素材として活用しやすいことも見逃せません。
SCM440から派生する金属素材として、「SCM440H」や「SCM440HQ」といった素材があります。
SCM440Hにおける「H」とは「焼入性(Hardenability)」を意味しており、JIS規格において焼き入れ性が保証されている「Hバンド鋼」ということを意味しています。なお、市場で取引されているSCM440は基本的に焼き入れ性が保証されており、「SCM440」と記されていても実際は「SCM440H」であることが大半です。
「SCM440HQ」はSCM440Hに、さらに「調質を行っている」という「Q」が付与されている素材です。
SCM440とSCM435も共にクロムモリブデン鋼であり、その違いは主として炭素含有量にあります。SCM440の炭素含有量が0.38~0.43%であることに対して、SCM435の炭素含有量はそれよりも低い0.33~0.38%となっています。
そのため、SCM440はSCM435よりも焼き入れ加工による強度や硬度を高めやすいという点が特徴です。
SCM440もSCM435も自動車部品や航空機脚部品、自転車フレームなどに利用されますが、特に硬度を高めたい場合は前者が採用されます。
SCM440の化学成分はJISにおいて下記のとおりに規定されています。
SCM440は引っ張り強さ「980N/mm2以上」とされており、「硬さ(HBW):285~352」や「伸び:12%以上」といった機械的性質を有しています。そのため、しっかりとした硬度を確保しつつ粘り強さも獲得したいというニーズに応えやすい金属素材といえるでしょう。
なお、熱処理前のSCM440は機械構造用炭素鋼「S45C」に近い性質を持っていますが、焼き戻しによって硬度を高めることが可能であり、脆性をコントロールしやすい点がポイントです。
SCM440は幅広い目的や分野に利用されている金属素材です。高温下による熱影響を受けにくいため、エンジンのように自動車の内燃機関の部品に利用されています。また、硬度や強度に優れており、しなりがあり、振動吸収性にも優れていることから航空機の脚部や自転車のフレームなどの部品にも使われます。
摩擦や傷に強いため、ボルトやナットといった部品の素材として利用されることもあります。
基本的に用途のジャンルとしてはSCM435と似ていることが特徴です。
SCM440のメリットとして加工性が高いということも見逃せません。ただし、強度や硬度に優れている反面、一般的な鉄鋼材と比較するとやや削りにくいのが難点。とはいえ、ステンレス鋼よりも削りやすいため、総合的に見て切削加工などの金属加工に適しています。
なお、クロムが含有されているためある程度の耐食性を確保できますが、本格的に腐食対策を考えるのであれば表面処理加工が必要です。
クロムモリブデン鋼には複数の種類があり、SCM440の他にもSCM435などが存在しています。そのため部品加工の素材としてクロムモリブデン鋼を選択する場合、SCM440にするかSCM435するか専門的な知見にもとづいて選定しなければなりません。
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